神宮外苑再開発の全容
- mori4590
- 2023年6月12日
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東京都の明治神宮外苑地区では、神宮球場や秩父宮ラグビー場の建て替えを含む再開発事業が3月に着工された。
しかし、この計画に対して多くの批判が寄せられている。
特に、多数の樹木伐採や超高層ビルの建設に対して疑問や懸念が生じている。
都市計画の仕組みについても問題があるのではないかという指摘もあり、このような批判がなぜ今になって広がっているのか、その計画の全容をここで紹介していく。
743本を伐採 190メートルのオフィスビルなど建設
明治神宮外苑地区では、神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替えるための再開発が進行中。この計画では、高層ビルやオフィスビルなども建設される予定で、2036年までに完了する予定となっている。
再開発の着手に向けた行政手続きの過程で、中央大研究開発機構の石川幹子教授が1000本近い樹木の伐採の恐れがあると指摘し、大量の樹木伐採が表面化した。
事業者は伐採の見通しを当初の892本から2割減らしたが、743本にのぼる。
このように樹木伐採や自然環境への影響が懸念され、周辺住民らからは再開発の見直しを求める声が出ています。彼らは現在、訴訟やウェブ署名などで行動しているという。
再開発の見直しを求めるウェブ署名は12万2000人を超えている。
太陽光発電設備義務化など環境問題を意識する一方で、このような伐採が行われることに都民は納得していないような面が見受けられる。
しかし、神宮外苑地区まちづくりのHPを見ると樹木の取り扱いについて以下のように説明がされている。
①神宮外苑のシンボルでもある4列のいちょう並木を保全します。
②豊かなみどりの継承のため、専門家の意見も取り入れながら慎重にすすめていきます。
③エリア全体の樹木数は、既存の1904本から1998本に増加します。

環境問題の指摘や周辺住民からの意見が想像以上に多かったため、このような説明が新たにされたのだろう。
このHPを見るといちょう並木を保全するためにさまざまな工夫を検討していることがわかる。これで樹木伐採についての問題はほぼほぼクリアされたと言えるだろう。
しかし、何も樹木伐採による問題だけではないようだ。
伐採についてはかなりメディアでも取り上げられたが、新植樹木で開発後に樹木がむしろ増える事についてはあまり取り上げられていない。
せっかくこのような工夫をしているのだから東京都としてはもっとPRしていき、周辺住民や世間の理解を得ることが必要だと感じる。
樹木伐採以外の問題点

神宮野球場(❹)の問題点
神宮野球場の周辺に高層ビル群(❸事務所棟 190m、❷複合棟A 185m、❶複合棟B 80m)が乱立する。これにより神宮野球場は高層ビルによる日陰やビル風が常態化し、試合に悪影響を及ぼす懸念がある。
さらに、都営住宅との距離が半減(現在の160mから80m)されたことにより騒音問題の悪化
が確実視されている。そうなると観戦時の声出し制限にもつながる恐れがある。
秩父宮ラグビー場(❻)の問題点
試合や観戦の環境が悪化する恐れがあるのは野球場だけではない。
秩父宮ラグビー場が大きく変わる点としては屋根付きという事だ。この屋根は開閉しないため、天候を味方につけるラグビーの醍醐味は喪失する。
他にも
・収容人数が4割減(2.5万人→1.5万人)
・天然芝→人工芝に変更されるため選手の怪我リスクが増大
以上の問題点が懸念される。
風致地区を無視した計画
かつて、神宮外苑は「風致地区」(良好な自然景観を維持するための厳しい基準が定められた区域)と呼ばれ、良好な自然景観を保つために建物の高さ制限が15mに設定されてた。
しかし、2013年に東京都は国立競技場建設を理由に、一気に高さ制限を75mに緩和。
この決定は東京オリンピックの招致が決まった年と同時期に行われた。
さらに、容積移転という手法を使って、高さ制限をさらに緩和し、190mの高層ビルの建設が可能に。
この容積移転は、特に東京オリンピックの招致(特に新国立競技場建設)と密接に関連しており、少なくとも2013年から神宮外苑の再開発計画は進行した。
新国立競技場建設を口実にした高さ制限の緩和や公園まちづくり制度による指定解除など、慎重な下準備が行われ、大規模再開発が可能となりその後、2021年12月に再開発計画の詳細が発表され、実際の計画内容が明らかになりました。
この発表をきっかけにして2022年以降、抗議活動が活発化した。
今後の神宮外苑再開発計画
すでに、工事開始まで残りわずか。
本記事で述べた問題点はまだまだ氷山の一角であり他にもさまざまな問題が出てくると思うが、何事も新しい取り組みには批判が伴うものだと思う。
しかし、周辺地域や世間の理解を得ることだけは忘れずにこの神宮外苑再開発をうまく成功してほしいと願う。
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